産後の“涙もろさ”は異常じゃない   ~ホルモンとこころのゆらぎの話

産後の“涙もろさ”は異常じゃない ~ホルモンとこころのゆらぎの話

産後、ふとした瞬間に涙があふれてしまう——。

そんなご相談を本当に多くいただきます。
でもこの涙は、あなたが弱いからではありません。
妊娠・出産を経た身体の大きな変化が、こころの揺れとして表れている自然な反応です。

今回は、産後に涙が出やすくなる理由と、そのゆらぎとの付き合い方をやさしくお伝えします。

どうして産後は涙が出やすくなるの?

産後の体では、わずか数日〜数時間でホルモンが大きく変化します。
この“急激な変化”が涙もろさにつながります。

エストロゲン・プロゲステロンの急降下

妊娠中に高く保たれていた2つのホルモンが、出産後に急激に低下します。
気分の安定や睡眠リズムに関わるホルモンなので、低下すると「理由のない涙」が出やすくなります。

プロラクチン(母乳ホルモン)の上昇

母乳をつくり、「赤ちゃんを守りたい」という気持ちを強めます。
そのぶん、些細なことでも胸がいっぱいになり涙が出ることも。

オキシトシン(愛情ホルモン)のゆらぎ

抱っこや授乳で分泌されるホルモン。
安心感をくれる一方で、感情が敏感になりやすく、「幸せすぎて涙」が起こることもあります。

“ホルモンのブレンド反応”

これらが同時に大きく動くことで、涙もろさが強く出ます。
決して異常ではなく、身体が回復へ向かう途中の自然な反応です。

涙もろさは「こころの調整反応」でもある

涙は感情があふれただけではなく、身体が「少し休みたいよ」と教えてくれるサインでもあります。

涙を流すと、副交感神経が働き、呼吸や心拍が落ち着いていきます。
これは、揺れやすくなった心を元に戻すための“自己調整”の動きです。

とはいえ、涙が続くとつらく感じることもありますよね。
そんなときに心が少し楽になるヒントをまとめました。

涙が続くとき、どう過ごしたらいい?

ひとりで抱えない

誰かに話すだけで心が軽くなることがあります。
家族、友人、助産師などに気持ちを預けてみてください。

“完璧じゃなくていい”を許す

できなかったことより、今日できた小さなことに目を向けると
こころの余裕が戻りやすくなります。

休む時間をつくる

10分横になる、温かい飲みものを飲むなど、短い休息が気持ちの回復につながります。

涙が長く続いたり、日常生活がつらい時は、早めに専門家へ相談することも大切です。

いつ相談したらいい?

こんなサインがあるときは、相談のタイミングです。

  • 涙が何日も続く
  • 不安や罪悪感が強くて苦しい
  • 眠れない日が続く
  • 食欲がない
  • 育児が楽しめない
  • 何をしても気持ちが晴れない

相談は“弱さ”ではなく、回復のための大切な一歩です。

助産師からのメッセージ

産後の涙は、あなたの心と身体が回復しようとしている証。
どうか泣ける自分を責めないでください。

あなたは十分にがんばっています。
でもつらいときは、いつでも頼ってくださいね。産後ケアや助産師外来でお待ちしています。